染繍舗 多ち花 :桶絞りと摺り型友禅 染め帯
小袖模様『菊に橘』
☆染繍舗 多ち花さんの染め帯はこちらのpageに掲載しています。
摺り型友禅は、彩色ごとに柄模様が彫られた型紙を置き換え、色を摺り込んで行く染色手法です。同じ彩色の濃淡に至るほどの型紙があるため、着物一点を染め上がるまで、二十枚以上の型紙を使い彩色が摺り込まれることは珍しくありません。
染繍舗 多ち花は、摺り型友禅の他、京刺繍や絞り染めと言った古くから伝承されて来た手仕事を凝らし、重ねることで、他にない世界観の着物や帯を制作している染め屋さんです。
こちらに掲載をさせて頂いている染め帯には、『橘』の図案が染められています。染繍舗多ち花さんで染められている染め帯の中でも、ついついシンボリックな印象を憶えてしまいます。屋号と作品名が重なっていることに加えて、この「橘」のデザインそのものが、小袖模様の古典的な妙を多ち花特有の趣で表現されているからです。
橘の彩色、菊の彩色、赤と紫と鶯色。染め分けられた疋田の彩色。そして、橘の花は、まるで戯れているような姿をみせているし、菊は隙間から覗いているかのようです。どれも個性的な彩りと戯画的な空気に包まれながら、心地良い調和が図られています。それは古典の美しさを、現代の着物感覚として、違和感なく染め上げられているからなのかもしれません。
多ち花の染め帯は、特有の世界感を伝えているかもしれませんが、京都の染め屋ならではの薫りに満ちています。こうした薫りは、不思議なくらい織の着物に馴染んで行きます。京都とは違う文化の土地で制作された織の着物を、柔らかい感じに仕上げてくる予感が多ち花の染め帯にはあるのかもしれません。
こうした印象的なデザイン性も、落ち着いた彩色の桶絞りが施されているため、何かが映えてみえることはありません。漂ってくる趣は柔らかく、お着物と心地良い調和を期待させてくれます。
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